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2025.10.5 ハイパースペクトルカメラ

ハイパースペクトルカメラとスマホカメラの違い

2025.10.5 お知らせ

Milk.株式会社は宇宙技術「ハイパースペクトルカメラ」を中核技術として所有するディープテックスタートアップです。当社は「Invisible World」というハイパースペクトル事業ブランドを立ち上げています。Invisible Worldは「ハイパースペクトルカメラ」をがん細胞の識別に応用して高精度な診断を実現するANSWER for Pathologyの開発を中心に、解析コンサルティングやWebアプリ開発受託も行っています。ハイパースペクトルカメラの活用に関しては、医療分野以外にも様々な分野で活用して解析を行い、ソリューションを開発してきました。そのような経験を踏まえ、今回は「ハイパースペクトルカメラとスマホカメラ」について、違いや比較、応用可能性を解説していきます。

 

  記事のポイント💡

 ・ハイパースペクトルカメラとはどのようなものか?

 ・ハイパースペクトルカメラとスマホカメラの違い

 ・ハイパースペクトルカメラとスマホの比較と応用可能性

 

  1. ハイパースペクトルカメラとは?

ハイパースペクトルカメラは、従来のカメラの色彩情報が3原色であるのに対し、141原色の色彩情報を有し、人間の目では見分けることの出来ない色(=ゴーストカラー)の違いを見分けることが出来るカメラです。また、従来のカメラとハイパースペクトルカメラの中間ほどの色彩情報を有するカメラとして、マルチスぺクトルカメラがあります。

※ゴーストカラー・・・可視光領域における人間の目で識別できない色に対する当社独自の呼称

 

 

ハイパースペクトルカメラは国際的に明確な定義があるものではなく、一般的に特定の波長帯を数十〜数百バンドに分光した情報と空間情報(ピクセル)を同時に取得できるカメラがハイパースペクトルカメラと呼ばれています。4バンド〜十数バンドの分光情報を取得できるカメラをマルチスペクトルカメラと呼ぶことが多いです。

なお、当社ではハイパースペクトルカメラを、市場に出回っている製品から「特定範囲の波長帯を数十~数百の波長のまとまりで分割した情報(分光情報)とその位置情報(ピクセル)を同時に取得できるカメラ」と定義しています。

波長数の多さや連続的なスペクトルを取得できることを要件とするケースもありますが、それぞれの方式にメリットがあるので広義に捉えています。

 

参考:Invisible World(Milk.Inc)「ハイパースペクトルカメラとは?

https://www.milk-med.com/blog/2024-03-25/

 

  1. ハイパースペクトルカメラ とスマホカメラの違い

昨今、スマートフォンのカメラは性能の向上が目覚ましく、カメラはスマートフォンで十分とお考えの方もいらっしゃるかと思います。弊社にも時折、スマートフォンのカメラでもAIなどによる画像解析を行えば、必要な分析が行えるのではないかといったご質問をいただくことがあります。そこでハイパースペクトルカメラとスマホカメラの違いを以下の表にまとめています。

スマホカメラも市販のカメラと同様にRGB(赤・緑・青)の3原色の色彩情報を捉えるため、RGBカメラの1つとなります。これに対し、ハイパースペクトルカメラは光の波長ごとに分けて撮影し、波長ごとのスペクトルデータを同時に取得できる分光カメラとなります。ハイパースペクトルカメラがスマホカメラより優れているというわけではなく、用途や目的が異なるのです。

 

項目

ハイパースペクトルカメラ

スマホカメラ

色彩情報(波長域)

141原色

3原色:RGB(赤・緑・青)

目的

物質の情報を詳細に解析する

人間の視覚に近い画像を作成して記録として残す

長所

・人間の目で識別できない情報 を取得できる

・色彩情報から成分分析が可能

・手軽に持ち運べる

・基本的に撮影環境を選ばない

短所

・取り扱いに専門知識が必要

・用途に合わせて仕様や撮影環 境などの設定が必要

・色彩情報として取得できる情 報は限定的

・スマホの利便性を確保する必 要性から仕様変更などの応用 性が高くない

用途

・研究や分析

・ソリューションとしての検査 装置(カメラシステム)

・日常使用(趣味、SNSなど)

・イベントや思い出の記録

※当社で扱うハイパースペクトルカメラは141原色ですが、商品によって違いがあります。

 

  1. ハイパースペクトルカメラとスマホの未来性

このようにスマホカメラとハイパースペクトルカメラではカメラとしては大きく異なります。また、スマホのカメラをRGBカメラではなく、分光カメラとすることは現状では技術的に困難です。一方でスマホとハイパースペクトルカメラを組み合わせることは、ソリューションとして大きな応用可能性があり、少しずつ現実化が進んでいます。実際に現在ではスマホと分光器を一体型にする製品なども販売されています。つまり、スマホは多くの情報(位置情報・角度や方位の確認・時間)や機能を有しており、分光カメラの情報と組み合わせることで、目的に合わせた成分分析などを簡便に行う製品の開発が出来ると考えられます。そのためには、ハイパースペクトルカメラで多くの色彩情報を取得した上で解析し、目的に必要な波長帯を特定した上で、必要な波長帯のみに限定することで分光器の製品開発へと繋げていくことが必要となります。

 

  1. ハイパースペクトルカメラとスマホの比較と応用

ハイパースペクトルカメラとスマホカメラではカメラそれぞれの性能を比較することは、あまり意味はありません。どのような目的で何を撮影(計測)したいかによって、それぞれの機能が発揮する局面が全く違うことから、双方のカメラの優劣を一面的な視点で比較をしないよう注意ください。また、特にスマホについてはカメラの機能があるため、そのカメラの活用を考えてしまいがちですが、上記のとおり、根本的に仕様が異なるため、スマホの持つ色彩情報以外の多様な情報の取得などの機能と、ハイパースペクトルカメラなどの分光カメラや分光器を「組み合わせること」を考えた方が大きな効果が得られるといえます。現在はまだスマホにハイパースペクトルカメラを搭載する技術はありませんが、分光器であれば一体型とする製品も出てきており、ハイパースペクトルカメラの技術を応用してハンディタイプの分光器も活用が進んでいます。実際に当社でもハイパースペクトルカメラによるPoCで必要な波長帯を特定し、ハンディタイプの分光器「イロドリ」で導入コストを抑える製品開発プランが最近では多くのお客様にお引き合いをいただいています。今後、更なる技術の進展により、スマホにハイパースペクトルカメラの機能が搭載されていくことも考えられますが、スマホの利便性を活用したソリューションとして現時点で実装が可能なイロドリを視野に入れていただくことで、応用可能性が広がるといえます。

 

 

  1. ハイパースペクトルカメラをお探しならMIlk.

以上のように、ハイパースペクトルカメラの画像からはスマホカメラと異なり、非常に多くの情報が得られ、スマホとの組み合わせによって、ソリューションとして応用可能であることがお分かりかと思います。しかしながら、ハイパースペクトルカメラを使用しても、きちんとした知識に基づき、計測(撮影)を行ってデータの解析を行わなければ、実装を目指した活用には繋がりません。

したがって、ハイパースペクトルカメラの技術をソリューションとして活用するには、ハイパースペクトルカメラをはじめとするハード面と画像解析のソフト面の両面が重要となります。この点、当社は多くの解析実績に基づくノウハウと、独自開発した解析ソフト”ANSWER”があります。当社ではハイパースペクトルカメラを活用した解析により、狙う波長を特定した上で、マルチスペクトルカメラ等の他の分光カメラや分光器を開発するなど、分解能のスペックを落として扱うデータ量を限定することで、実装に向けた開発を見据えたサポートを提供しております。ハイパースペクトルカメラにご興味を持たれましたら、是非、当社までご連絡ください。

 

 

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