ハイパースペクトルカメラのプラスチックへの活用
Milk.株式会社は宇宙技術「ハイパースペクトルカメラ」を中核技術として所有するディープテックスタートアップです。当社は「Invisible World」というハイパースペクトル事業ブランドを立ち上げています。Invisible Worldは「ハイパースペクトルカメラ」をがん細胞の識別に応用して高精度な診断を実現するANSWER for Pathologyの開発を中心に、解析コンサルティングやWebアプリ開発受託も行っています。ハイパースペクトルカメラの活用に関しては、医療分野以外にも様々な分野で活用して解析を行い、ソリューションを開発してきました。そのような経験を踏まえ、今回は「ハイパースペクトルカメラ」をプラスチックに関するソリューションとして活用することについて解説していきます。
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ハイパースペクトルカメラとは?
ハイパースペクトルカメラは、従来のカメラの色彩情報が3原色であるのに対し、141原色の色彩情報を有し、人間の目では見分けることの出来ない色(=ゴーストカラー※)の違いを見分けることが出来るカメラです。また、従来のカメラとハイパースペクトルカメラの中間ほどの色彩情報を有するカメラとして、マルチスぺクトルカメラがあります。
※ゴーストカラー・・・可視光領域における人間の目で識別できない色に対する当社独自の呼称
ハイパースペクトルカメラは国際的に明確な定義があるものではなく、一般的に特定の波長帯を数十~数百バンドに分光した情報と空間情報(ピクセル)を同時に取得できるカメラがハイパースペクトルカメラと呼ばれています。4バンド〜十数バンドの分光情報を取得できるカメラをマルチスペクトルカメラと呼ぶことが多いです。
なお、当社ではハイパースペクトルカメラを、市場に出回っている製品から「特定範囲の波長帯を数十~数百の波長のまとまりで分割した情報(分光情報)とその位置情報(ピクセル)を同時に取得できるカメラ」と定義しています。
波長数の多さや連続的なスペクトルを取得できることを要件とするケースもありますが、それぞれの方式にメリットがあるので広義に捉えています。
参考:Invisible World(Milk.Inc)「ハイパースペクトルカメラとは?
https://www.milk-med.com/blog/2024-03-25/
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近赤外ハイパースペクトルカメラがプラスチックに特に有効な理由
プラスチックに関しては、近年、環境問題への意識の高まりから、サーキュラーエコノミーに向けた取組が進んでいます。特にリサイクル等の廃棄物へのソリューションの取組が進んでおり、その際に重要となるのがプラスチックの識別です。プラスチックにはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)など多様な素材があり、リサイクルのためにはこの素材を識別しなければなりません。
この点、近赤外ハイパースペクトルカメラは、成分分析に親和性が高く、ソリューションとして大きな効果を発揮します。近赤外ハイパースペクトルカメラは対象物へ近赤外線を照射した際の反射や透過した光を計測して、対象物の成分を分析します。これは素材によって、光の吸収が異なることで、対象物からの反射される光や透過する光の違いを応用して識別しているものです。
このように近赤外ハイパースペクトルカメラは成分分析によって、素材の識別を行うことに適しており、プラスチックにおける様々な課題の解決が期待出来るという点で、特に有効なソリューションなり得ると考えられます。
<ハイパースペクトルカメラにより透明な5種類のプラスチックを分類>
出典 ケイエルブイ株式会社:https://www.klv.co.jp/hyperspectral/case_study/case_study01.html
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ハイパースペクトルカメラとプラスチックを含む環境問題への意識の高まり
ハイパースペクトルカメラは上述の通り、プラスチックを含む環境問題への意識の高まりに対して、1つの解決策となる可能性を有しています。プラスチックはリサイクルするためには素材を識別しなければならないこと、そして、近赤外ハイパースペクトルカメラがそのソリューションになり得ることはご説明の通りです。
一方で、近年ではプラスチックごみの海洋生態系への流入も問題となっています。海へプラスチックが流入することで、海洋生物や鳥が誤飲することで生態系の破壊に繋がります。また、マイクロプラスチックは水生生物が摂取してしまうと、最終的にそれらを食べる人間にも悪影響が指摘されています。
こうしたマイクロプラスチックを含めたプラスチックの分布などを、ハイパースペクトルカメラを活用して可視化する取組が進んでいます。将来的にはドローンや人工衛星等の空中からの撮影で、海におけるプラスチックの分布を把握しようという検討もなされています。
<4種類の主要なプラスチックが水中に存在する場合の吸光度スペクトルについて、プラスチックと水の寄与の分離結果>出典:JAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20231006/
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ハイパースペクトルカメラをお探しならMIlk.
以上のように、ハイパースペクトルカメラの画像からは非常に多くの情報が得られ、環境問題などの分野においても応用可能であることがお分かりかと思います。しかしながら、ハイパースペクトルカメラを使用しても、きちんとした知識に基づき、測定(撮影)を行ってデータの解析を行わなければ、実装を目指した活用には繋がりません。
したがって、ハイパースペクトルカメラの技術をソリューションとして活用するには、ハイパースペクトルカメラのハード面と画像解析のソフト面の両面が重要となります。この点、当社は多くの解析実績に基づくノウハウと、独自開発した解析ソフト”ANSWER”があります。当社ではハイパースペクトルカメラを活用した解析により、狙う波長を特定した上で、マルチスペクトルカメラ等、分解能のスペックを落として扱うデータ量を限定することで、実装に向けた開発を見据えたサポートを提供しております。ハイパースペクトルカメラにご興味を持たれましたら、是非、当社までご連絡ください。