ハイパースペクトルカメラの波長とは?
Milk.株式会社は宇宙技術「ハイパースペクトルカメラ」を中核技術として所有するディープテックスタートアップです。この度、当社は中核事業であるハイパースペクトルカメラ事業について、「Invisible World」という事業ブランドを立ち上げました。Invisible Worldは、「ハイパースペクトルカメラ」をがん細胞の識別に応用して高精度な診断を実現するANSWER for Pathologyの開発を中核とし、解析コンサルティングやWebアプリ開発受託も行っています。当社ではハイパースペクトルカメラを活用して医療分野以外にも様々な分野でソリューションを開発してきました。このようにハイパースペクトルカメラの専門家である当社が、今回は「ハイパースペクトルカメラ」前提である光の波長について解説していきます。
-
ハイパースペクトルカメラとは?
ハイパースペクトルカメラは、従来のカメラの色彩情報が3原色であるのに対し、141原色の色彩情報を有し、人間の目では見分けることの出来ない色(=ゴーストカラー※)の違いを見分けることが出来るカメラです。また、従来のカメラとハイパースペクトルカメラの中間ほどの色彩情報を有するカメラとして、マルチスぺクトルカメラがあります。
※ゴーストカラー・・・可視光領域における人間の目で識別できない色に対する当社独自の呼称
ハイパースペクトルカメラは国際的に明確な定義があるものではなく、一般的には特定の波長帯を数十〜数百バンドに分光した情報と空間情報(ピクセル)を同時に取得できるカメラがハイパースペクトルカメラと呼ばれています。また、4バンド〜十数バンドの分光情報を取得できるカメラをマルチスペクトルカメラと呼ぶことが多いです。
なお、当社ではハイパースペクトルカメラを、市場に出回っている製品から「特定範囲の波長帯を数十~数百の波長のまとまりで分割した情報(分光情報)とその位置情報(ピクセル)を同時に取得できるカメラ」と定義しています。
波長数の多さや連続的なスペクトルを取得できることを要件とするケースもありますが、それぞれの方式にメリットがあるので広義に捉えています。
参考:SPECIM、スペクトラルイメージング株式会社
「ハイパースペクトルイメージングとは?」
https://www.specim.com/technology/what-is-hyperspectral-imaging/
参考:Invisible World(Milk.Inc)「ハイパースペクトルカメラとは?
https://www.milk-med.com/blog/2024-03-25/
-
ハイパースペクトルカメラの波長とは?
ハイパースペクトルカメラと密接な関わりがある言葉として、「波長」という言葉を目にされるかと思います。これはハイパースペクトルカメラにおいては、何を見たいかによって計測する波長が変わるため、ハイパースペクトルカメラの仕様に大きく関わってくるためです。
ハイパースペクトルカメラに限らず、カメラは「光」の情報を撮影しています。そして、光とは電磁波の1つで、電磁波にはγ線やX線といった光よりも波長の短いものもあれば、マイクロ波のように光よりも波長の長いものもあります。
これらの電磁波のうち、1nmから1mmの波長をもつ電磁波のことを一般的には「光」としています。さらに詳しく説明しますと、紫外線~可視光~赤外線の範囲の電磁波が「光」とされています。
このように光とは波(電磁波)であり、その長さを波長といい、波長の長さによって分類がされているのです。
参考:Iris株式会社「ハイパースペクトルカメラとは?」
https://hokkaido-sat.co.jp/service/hyperspectrum/
-
ハイパースペクトルカメラの波長とバンド幅(計測波長幅)の違い
上記のとおり、ハイパースペクトルカメラは、何を見たいかによって計測(撮影)する光の波長を選択していきます。一方で、実際に光を計測する際、ハイパースペクトルカメラの分光器から出てくる光は完全な単一色ではなく、近接する波長の光が混ざったものとなります。この計測する光の波長の幅(分布)をバンド幅(計測波長幅)といい、ハイパースペクトルカメラで計測する際にはバンド幅を2nm、5nm、10nmといった幅で選定します。このように(光の)波長とは、電磁波の長さを指すものである一方、バンド幅とはカメラで撮影する際に設定する波長の幅(分布)を指すものです。そして、ハイパースペクトルカメラで撮影できる波長領域に対し、選定したバンド幅ごとに分割した数が測定できる波長の数となり、これをバンド数といいます。
なお、理論的にはバンド幅が小さいほど、分光器から出てくる光はより完全な単一色に近くなりますが、必ずしもバンド幅を小さく設定すれば良いというものではありません。バンド幅を小さくすれば、それだけ光も弱くなり、取得するデータにもノイズが増えるためです。
-
ハイパースペクトルカメラをお探しならInvisible World
以上のように、電磁波の1つである光だけでも、人の目で識別できる以上に非常に多くの情報があり、この情報を従来よりも多く取得・識別できる技術がハイパースペクトルカメラとなります。しかしながら、ハイパースペクトルカメラを使用しても、きちんとした知識に基づき、カメラの仕様から撮影環境など適切な選定を行わなければなりません。
例えば、上記でバンド幅を必ずしも小さく設定すれば良いというものではないことを述べましたが、光源の選定によっては更に光が弱くなり、取得するデータのノイズも大きくなります。この点、当社が扱うハイパースペクトルカメラはバンド幅を5nmとしていますが、これは光源や撮影環境など、色々な条件下においても計測の汎用性が認められるものとして設定しているものとなります。
また、当社が扱うIris社のハイパースペクトルカメラは光学系の組み換え、センサの組み換えをしやすいため、お客様のニーズに合わせた設計を行うこともできます。そして、当社は多くの解析実績に基づくノウハウと、独自開発した解析ソフト”ANSWER”があります。当社ではハイパースペクトルカメラを活用した解析により狙う波長を特定した上で、マルチスペクトルカメラなど分解能のスペックを落として扱うデータ量を限定することで、実装に向けた開発を見据えたサポートを提供しております。当社のハイパースペクトルカメラにご興味を持たれましたら、是非、当社までご連絡ください。