ハイパースペクトルカメラと衛星の組み合わせによる活用分野について
Milk.株式会社は宇宙技術「ハイパースペクトルカメラ」を中核技術として所有するディープテックスタートアップです。現在は、「ハイパースペクトルカメラ」をがん細胞の識別に応用して高精度な診断を実現するANSWER for Pathologyの開発を中核とし、解析コンサルティングやWebアプリ開発受託も行っています。ハイパースペクトルカメラの活用に関しては、医療分野以外にも様々な分野で活用して解析を行い、ソリューションを開発してきました。今回は宇宙技術である「ハイパースペクトルカメラ」を、宇宙の衛星とどのように組み合わせて活用し、どのようなメリットがあるか解説していきます。
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ハイパースペクトルカメラとは?
ハイパースペクトルカメラは、従来のカメラの色彩情報が3原色であるのに対し、141原色の色彩情報を有し、人間の目では見分けることの出来ない色(=ゴーストカラー※)の違いを見分けることが出来るカメラです。また、従来のカメラとハイパースペクトルカメラの中間ほどの色彩情報を有するカメラとして、マルチスぺクトルカメラがあります。
※ゴーストカラー・・・可視光領域における人間の目で識別できない色に対する当社独自の呼称
なお、当社ではハイパースペクトルカメラを、市場に出回っている製品から「特定範囲の波長帯を数十~数百の波長のまとまりで分割した情報(分光情報)とその位置情報(ピクセル)を同時に取得できるカメラ」と定義しています。
波長数の多さや連続的なスペクトルを取得できることを要件とするケースもありますが、それぞれの方式にメリットがあるので広義に捉えています。
参考:Milk.株式会社「ハイパースペクトルカメラとは?
https://www.milk-med.com/blog/2024-03-25/
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ハイパースペクトルカメラと衛星を組み合わせた活用分野
当社では子会社のIris株式会社で衛星に搭載可能なハイパースペクトルカメラの設計・製造を行っています。当社における活用実績をもとに、ハイパースペクトルカメラと衛星を組み合わせた活用分野を紹介します。
a.防災・減災分野への活用
ハイパースペクトルカメラと衛星を組み合わせて、地球上の画像データを取得して解析することによって、山火事の可視化や土砂災害等の自然災害の予測・検知に活用が可能です。例えば、山火事は発生を検知するまでの時間と発生時の被害の全容把握が困難であるため、消火に至るまで多くの時間が必要となる課題があります。これらを衛星に搭載したハイパースペクトルカメラによる画像データの取得と解析によって、早期検知と全容把握を行うことが可能となり、早期の消火に繋げることで防災・減災を実現することができます。土砂災害についても同様に、宇宙にある衛星からの画像データの取得・解析の活用により、地上では認識が困難な土砂災害の予測・検知・全容把握が可能です。
b.農業分野への活用
農業分野においては、スマート農業の実現に活用ができます。衛星用ハイパースペクトルカメラによる画像データ取得・解析により、食物の病害虫やタンパク量の検知を行うことができ、また、土壌の塩害や鉱物の検知といった土壌検査にも活用することができます。人手不足が社会課題となっている農業分野において、データを活用して省力化を実現したスマート農業は、今後、必ず必要となってくるため、衛星用ハイパースペクトルカメラの活用可能性が特に大きい分野と考えられます。
c.海上安全分野への活用
ハイパースペクトルカメラの始まりは、20世紀初頭に米国の軍事研究所が軍事用に活用したという説が有力ですが、現在はこの技術を転用して、安全保障の分野でも活用されています。特に海上安全分野においては、罹災者救助や不審船・海洋プラスチックの監視などに活用されています。人工衛星にハイパースペクトルカメラを搭載することによって、人命救助や安全保障という人の生命に直結する分野の課題解決にも活用することができるのです。
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衛星用ハイパースペクトルカメラのメリット
人工衛星が多く利用される分野として「リモートセンシング」が注目されていますが、ハイパースペクトルカメラを人工衛星に搭載して活用することによって、その可能性を広げることができます。現在、宇宙ビジネスにおけるリモートセンシングは大きな市場拡大が見込まれており、衛星用ハイパースペクトルカメラを活用することが、重要なファクターになるものと当社は考えています。ハイパースペクトルカメラは、一般的なカメラよりも高い空間分解能と色彩分解能を有しているため、衛星に搭載することによって、ハイパースペクトルカメラの機能を活かして、宇宙から対象物の形や性質、状態を検知することが可能となるのです。当社の子会社であるIris株式会社(旧 北海道衛星株式会社)は、実際に宇宙分野で衛星用ハイパースペクトルカメラの活用・導入の実績を積み重ねてきており、その可能性を実感しています。
参考:Milk.株式会社とIris株式会社の連携
https://hokkaido-sat.co.jp/chat/milk_ai_hsd/
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ハイパースペクトルカメラをお探しならMIlk.
以上の通り、宇宙ビジネスで注目されているリモートセンシングにおいて、衛星用ハイパースペクトルカメラが重要なファクターとなっていることをご理解いただけたかと思います。一方で、衛星用ハイパースペクトルカメラの選択においては、ハイパースペクトルカメラであればどれでも良いということではなく、高い分光性能を有していることが極めて重要となります。この点、当社のハイパースペクトルカメラは分光精度に関して、世界でも珍しい分光誤差0.3nm以下を保証しており、非常に高い精度となっています。このような精度を実現するために、製造を担う子会社のIris株式会社では、1台1台を職人の手で製造しています。あえてIris株式会社でこのような製造手法を取っている理由は、Iris株式会社がハイパースペクトルカメラの発明者で元JAXA研究員の故佐鳥新教授によって創業された会社であり、その理念を受け継ぎ、高い品質にこだわったハイパースペクトルカメラの製造を行っているためです。このように創業の歴史から、当社とIris株式会社は高品質のハイパースペクトルカメラに加えて、宇宙分野における実績とノウハウがあります。さらに、当社は多くの解析実績に基づくノウハウと、独自開発した解析ソフト”ANSWER”があります。このようにハイパースペクトルカメラの分光精度と独自開発の解析ソフトからくる実用性が当社の強みとなります。当社はハイパースペクトルカメラの製造・販売だけでなく、お客様の目的に合わせて、開発のサポートをすることで、お客様に実用性の高いソリューションを提供しています。衛星を活用したリモートセンシングのビジネスをご検討される際は、ぜひ当社までご連絡ください。