ハイパースペクトルカメラとは?ハイパースペクトルカメラの種類とその使い方を紹介
Milk.株式会社は宇宙技術「ハイパースペクトルカメラ」を中核技術として所有するディープテックスタートアップです。現在は、「ハイパースペクトルカメラ」をがん細胞の識別に応用して高精度な診断を実現するANSWER for Pathologyの開発を中核とし、解析コンサルティングやWebアプリ開発受託も行っています。ハイパースペクトルカメラの活用に関しては、医療分野以外にも様々な分野で活用して解析を行い、ソリューションを開発してきました。
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ハイパースペクトルカメラとは?
ハイパースペクトルカメラは、従来のカメラの色彩情報が3原色であるのに対し、141原色の色彩情報を有し、人間の目では見分けることの出来ない色(=ゴーストカラー※)の違いを見分けることが出来るカメラです。
※ゴーストカラー・・・可視光領域における人間の目で識別できない色に対する当社独自の呼称
当社ではハイパースペクトルカメラを、市場に出回っている製品から「特定範囲の波長帯 を数十~数百の波長のまとまりで分割した情報(分光情報)とその位置情報(ピクセル) を同時に取得できるカメラ」と定義しています。
波長数の多さや連続的なスペクトルを取得できることを要件とするケースもありますが、 それぞれの方式にメリットがあるので広義に捉えています。
参考:Milk.株式会社「ハイパースペクトルカメラとは?
https://www.milk-med.com/blog/2024-03-25/
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ハイパースペクトルカメラの種類
ハイパースペクトルカメラは主に分光方式によって、種類が異なっており、今回はハイパースペクトルカメラの分光方式のカテゴリー別で、主要な3種類を解説いたします。
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ラインスキャン型
ラインスキャン型はハイパースペクトルカメラの元祖といえる分光方式で、カメラか対象物を一直線に動かすための動作機構を組み合わせて撮影を行うものです。国内で主流となっているタイプのハイパースペクトルカメラになります。ただし、近年は当社をはじめ、カメラ内部にスキャン機構を搭載して一体化させて、小型化した上で撮影を容易にした「ステージスキャン(内部スキャン)型」が、ラインスキャン型の中でも主流となっています。計測方式は空間掃引方式というもので、イメージは下記の通り、コピー機のようなスキャナ方式になります。
このタイプのメリットとデメリットは、以下の通りです。
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スナップショット型
スナップショット型は、近年、実用化されているハイパースペクトルカメラの中では最新の分光手法です。バンド数に限りがある等の性能から、ハイパースペクトルカメラよりもマルチスペクトルカメラに近いかもしれません。仕組みはイメージセンサーにフィルターを蒸着させて分光する方式で、通常のRGB画像のセンサーがRGBGの4つのフィルターをセンサー直前に設置しているのに対し、最大数十ものバンドパスフィルターを設置し、分光を行うことができます。かなり小型化されているタイプになるため、使いやすいカメラとなりますが、性能の特徴を理解して用途に合わせて選択する必要があります。
このタイプのメリットとデメリットは、以下の通りです。
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分光フィルター型
分光フィルター型は、バンド数が少なくマルチスペクトルカメラに近いタイプで、液晶チューナブルフィルターについてもこの方式です。ハイパースペクトルカメラの中ではマイナーな種類となります。仕組みとしては電圧を変えることで、透過波長を変えながら撮影します。特定の波長しか通さないフィルター(バンドパスフィルター)を通して撮影したデータを合成することで、複数のスペクトル情報をもった画像データを取得できます。
このタイプのメリットとデメリットは、以下の通りです。
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ハイパースペクトルカメラの使い方
ハイパースペクトルカメラは人間の目では見分けることの出来ない色(=ゴーストカラー)の違いを見分けることができることを説明しましたが、分光方式によって種類が異なり、その種類ごとに用途に対する得意・不得意があります。そのため、ハイパースペクトルカメラ
は用途ごとに種類を選択することが重要です。
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空撮
近年は主にドローンにハイパースペクトルカメラを搭載し、上空から撮影する使用方法が増えてきています。この用途に最も向いているのは小型で動いているものの撮影が得意なスナップショット型のハイパースペクトルカメラです。また、ラインスキャン型のうち、ステージスキャン型もドローン企業との連携が可能な会社であれば対応可能です。
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顕微鏡
顕微鏡にハイパースペクトルカメラを搭載して撮影する際は、静止したものを撮影することが前提となり、分光性能が高いことが重要となります。そのため、ラインスキャン型(特にステージスキャン型)と分光フィルター型が適しているタイプになります。近年はイメージセンサーの性能が向上したこともあり、紫外線や遠赤外線も対応しているため、当社でも顕微鏡に搭載した上で、成分分析などの解析を行うケースが非常に多いです。
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屋外
屋外での撮影におけるポイントは撮影環境が流動的である点となります。屋内で撮影する際は光源を使用し、安定した撮影環境を確保できますが、屋外での撮影においては天候で撮影環境が変わるため、安定して高い画質を確保できることが重要となります。スナップショット型は小型で撮影も容易であるため、屋外の撮影にも適していますが、分光性能を上げるほど解像度が下がってしまうため、注意が必要です。また、ラインスキャン型はカメラとは別に動作機構を必要とするため、屋外では撮影までの準備に時間がかかってしまうため、適しているとは言えません。しかし、ラインスキャン型の中でも、ステージスキャン型であれば動作機構が内部にあり、一体化されているため、屋外における撮影にも適していると言えます。
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ハイパースペクトルカメラをお探しならMIlk.
ハイパースペクトルカメラはこれまで述べてきたように、用途・目的に沿った仕様を選択して、開発・製造することが重要となります。この点、ハイパースペクトルカメラの種類の選択において、当社が採用しているステージスキャン型は、汎用性が高いタイプといえます。また、ハイパースペクトルカメラで高精度な解析を行うためには、分光方式ごとに種類を選択することに加えて、カメラの製造における精度も重要となります。この点、当社は分光精度の誤差0.3nm以下という独自出荷基準を設けて精度を担保しています。これは職人一人一人が手作業で製造することで実現しているものです。また、自社開発の画像解析アプリケーションがあるため、PoCからカメラの開発・製造、さらに実装にあたってのコンサルまで行うことで、お客様のニーズに合わせて導入に向けたカスタマイズができます。
このように高品質なハイパースペクトルカメラの製造から、ソフトウェア開発、コンサルティングが可能となっている理由として、当社には学術的な裏付けがあることが挙げられます。当社は代表を務めるAI研究者の中矢と、国内におけるハイパースペクトルカメラの権威である故佐鳥新教授とで設立された会社であり、学術成果を上げてきていることで高品質なハイパースペクトルカメラの製造と画像解析を可能としています。
以上がハイパースペクトルカメラの種類と使い方の解説となります。当社ではハイパースペクトルカメラの検討をされているお客様には、計測サービスをご案内して、導入検討の初期段階よりサポートをしております。ハイパースペクトルカメラにご興味を持たれましたら、是非、当社までご連絡ください。
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用語を解説
・分光・・・様々な波長を含む光を波長に応じて分けることをいいます。
・スペクトル・・・可視光および紫外線・赤外線などを分光器で分解して波長の順に並べたもの。
・バンド数・・・測定できる波長の数をいいます。