ハイパースペクトルカメラの農業分野への活用について
目次
Milk.株式会社は、これまで医療分野の課題解決を中心にハイパースペクトルカメラを活用してきました。一方で、医療分野以外にも様々な分野でもご用命をいただき、ハイパースペクトルカメラを活用して解析を行い、ソリューションを開発してきました。今回の記事では、ハイパースペクトルカメラの農業分野への活用について解説します。
ハイパースペクトルカメラは非常に汎用性が高い技術であり、活用が可能な分野は多岐にわたります。今回は、実際に当社の農業分野への活用実績を交えながらご説明します。
1.ハイパースペクトルカメラとは?
ハイパースペクトルカメラは、従来のカメラの色彩情報が3原色であるのに対し、141原色の色彩情報を有し、人間の目では見分けることの出来ない色(=ゴーストカラー※)の違いを見分けることが出来るカメラです。
※ゴーストカラー・・・可視光領域における人間の目で識別できない色に対する当社独自の呼称
当社ではハイパースペクトルカメラを、市場に出回っている製品から「特定範囲の波長帯を数十~数百の波長のまとまりで分割した情報(分光情報)とその位置情報(ピクセル)を同時に取得できるカメラ」と定義しています。
波長数の多さや連続的なスペクトルを取得できることを要件とするケースもありますが、それぞれの方式にメリットがあるので広義に捉えています。
参考:国立環境研究所「ハイパースペクトルカメラの利用について」
https://www.nies.go.jp/kanko/news/33/33-1/33-1-05.html
2.ハイパースペクトルカメラのデータ分析の仕組み
日本国内外では、さまざまな分光方式によるハイパースペクトルカメラ(センサ)が販売されています。その中でも今回は、国内で主流となっている「内部スキャン方式」のハイパースペクトルカメラを取り上げて、分析の仕組みをご説明します。
内部スキャン方式のハイパースペクトルカメラは、カメラ内部にスキャン機構を搭載している点が特徴です。計測方式は空間掃引方式というもので、イメージとしてはコピー機のようなスキャナ方式になります。
3.ハイパースペクトルカメラの農業分野の研究事例
農業分野における研究事例として、当社では太陽光や照明の光、また、その光が農作物や物体などに当たり、返ってくる光のことをハイパー/マルチスペクトル(他分野では周波数という表現もある)と呼び、このスペクトルを観測して農作物(植物)の生育状況や腐敗、病害を調べる研究を行いました。実際にいもち病について、ハイパースペクトルカメラを使用して計測を行ったものが下図となります。
このようにハイパースペクトルカメラによる計測を行うことで、農作物の病害を可視化することが可能であると分かり、また、病害の他にも農作物などの生育状況を把握しやすくなることが確認できました。さらに、どこに肥料を与えればよいか、または、生育状況がおかしい(病気など疑わし い)ことを見つけることが可能となります。
4.ハイパースペクトルカメラの導入事例
当社における導入事例の一部が下記です。この他にも上記で示した通り、農業分野においても有効であることが分かり、現在、果実をターゲットとした導入を進めています。多くの分野のお客様 からご要望をいただいており、当社においても活用分野は更に広がっています。
・食品分野:マグロの鮮度解析に活用
・インフラ分野:ドローンに装着して保守メンテナンスに活用
・防災分野:土壌の水分量の解析に活用
・機器検査分野:お札の真贋解析に活用
・美容分野:ファンデーションの塗布具合や皮膚への影響の解析に活用
導入にあたっては、当社ではお客様のご要望をきちんとヒアリングし、PoCを行った上で、用途・目的に合わせたカメラシステムを開発しています。さらに、当社ではハードウェアだけでなく、ソフトウェアも開発しており、お客様のニーズに合わせたソフトウェア開発を行うことで、より効果的な導入を実現しています。
参考:当社のWebアプリケーション開発の特徴
https://www.milk-med.com/service/application/
5.ハイパースペクトルカメラ×農業の将来性
ハイパースペクトルカメラを使うことで、農作物の生育状況や腐敗、病害などを画像として計測・把握することができるようになります。このハイパースペクトル技術を使うことで、次世代農業を実現することができるものと考えています。具体的には「農業リモートセンシングによる精密農業生産システムのパッケージ化(センサ・ネットワーク・観測システム)」を導入することで、次世代農業を実現し、農業の将来性に繋がるものと考えています。
なお、海外では農業向けハイパースペクトルイメージングの取組が進んでおり、リモートセンシングにより、効率的なアグリビジネスを展開している例もあります。
参考:農業向けハイパースペクトルイメージング
https://www.eetimes.eu/hyperspectral-imaging-for-agriculture/
6.まとめ
以上のようにハイパースペクトルカメラは、農業分野にも活用が可能であるだけでなく、農業分野においては、次世代農業を実現するための技術となりうるものと当社では考えています。既に多くのお客様と次世代農業の実現に向けて、研究・開発を進めていますが、農業分野における課題解決を考えておられるようでしたら、是非、当社までご連絡ください。
Milk.株式会社
古川