ハイパースペクトル解析サービスって何?
今回は、そもそも「ハイパースペクトル解析サービス」って何?ということを解説していこうと思います。
藤井自身が文系出身ということもあり、入社してからかなり長い間、みんなが言っている「ハイパースペクトル解析」ってどういう意味だろう?という疑問を持っていました。
しばらくするとハイパースペクトルカメラの利用を検討されているお客様との接点も増え、解析の現場にも携わる中で、徐々に「ハイパースペクトル解析とは何か」の輪郭が見えてきましたが、初めてお聞きする方にとっては、よく分からない言葉だと思います。
そこで、今回はハイパースペクトル解析サービスのご依頼をご検討されている方に向けて、ハイパースペクトルカメラとは何か、ハイパースペクトル解析とは何かについて、できるだけ噛み砕いてお伝えできればと思います。
1.ハイパースペクトルカメラとは何か
まず、ハイパースペクトルカメラの定義を説明します。
Milk.株式会社では、市場に出回っている製品から「特定範囲の波長帯を数十~数百の波長のまとまりで分割した情報(分光情報)とその位置情報(ピクセル)を同時に取得できるカメラ」と定義しています。
波長数の多さや連続的なスペクトル(分光情報)を取得できることを要件とするケースもありますが、それぞれの方式にメリットがあるので広めに捉えています。
もう少し平易な言い方をすると、ハイパースペクトルカメラは、通常のカメラと比べて「色の違い」をより細かく捉えることのできるカメラということになります。
2.ハイパースペクトル解析とは何か
解析と聞くと、PCをカタカタと操作して、複雑な数式を使ってグラフを出したりするイメージを思い浮かべる方が多いでしょうか。
オックスフォードの辞書で調べると、解析という言葉の意味には、
「事柄を細かく分けて、組織的・論理的に調べること。」とあります。
分解して、分析するという言葉の後ろだけを取ったようなイメージです。
ハイパースペクトル解析でも、機械学習の手法や画像処理の技術を使って、ハイパースペクトルカメラから取得される膨大な情報を人間に理解しやすくするための「解析」業務をすることはありますが、ハイパースペクトル解析の仕事はそこに留まりません。
弊社では、何かを識別や分類したいという目的がある中で、それに関わる要素を分解し、推論を立てて、検証しながら一つの結論を出していく一連の流れを「ハイパースペクトル解析」と考えています。
もう少し簡潔にお伝えすると、「ハイパースペクトル解析サービス」とは「ハイパースペクトル技術やその関連知識を持った私たちが、あなたの代わりに色々な手法を試して結論を出すのをお手伝いしますよ」というトータルのサービスになります。
3.ハイパースペクトル解析サービスの流れ
ここからは、実際のハイパースペクトル解析サービスの流れを説明していきます。
①ヒアリング/課題抽出
最初に、解析のゴールを確認します。
お客様へのヒアリングを通して、ハイパースペクトルカメラを利用して、何を識別したいのか、どこに今回のプロジェクトのゴールがあって、現段階からどこまで検証が進むことで次のステップに移ることができるのかなどを確認します。
もちろん、撮影対象物についてはお客さまの方がプロフェッショナルなので、対象物の特徴や学術的な蓄積などについては、ヒアリングを通して教えていただくケースが多いです。
②撮影方法検討/撮影
ヒアリング内容をもとにハイパースペクトルカメラによる撮影方法を検討します。撮影環境、撮影器具だけでも数多くの選択がありますが、撮影対象物から導き出される制約条件をもとにして、どのようにハイパースペクトルカメラで撮影するかを決定します。
例えば、ハイパースペクトルカメラでの撮影に利用する光源の種類や当て方、補正のための対象物の準備などを考慮する必要があります。
過去にハイパースペクトルカメラによる撮影を行っていたり、ハイパースペクトルデータの傾向をすでに知っている場合は簡単に手法を絞り込めますが、これまでにハイパースペクトルカメラで撮影したことがない対象物については、過去の学術成果で似たような解析を行った方がいないかなども調査し、ハイパースペクトルカメラで違いが捉えやすい撮影方法を探っていきます。
③生のハイパースペクトルデータの確認
ハイパースペクトルカメラでの撮影後、撮影対象の処理前のハイパースペクトルデータを確認します。
処理前のハイパースペクトルデータには非常に多くの情報が眠っていますが、それが色々な情報(ノイズ)に埋もれ、見えづらくなっています。
それでも大まかな傾向を確認することはできるので、生のハイパースペクトルデータから得られる情報をもとにどのような解析をすることで、ハイパースペクトルカメラによる識別可能性を示すことができるかを考えていきます。
④仮説立て/検証 のループ
ハイパースペクトルカメラで取得した生データから得られた情報をもとに、どのような解析手法を選択することで、求めたい結論を得ることができるのかの仮説を立てます。
実際にその手法を用いて、複数の検体において一定の識別精度が得られる場合は次のステップに進みますが、そうでない場合には、他の仮説を立てて検証を繰り返します。
⑤レポート作成
①~④までの過程をレポートにまとめます。
再現性を担保するために、今回の検証で使用したデータや手法に関して、できる限りの情報をまとめて行きます。
以上が、ハイパースペクトル解析の大まかな流れです。
ハイパースペクトルカメラの技術自体が、「光学」「工学」「情報工学」の重なり合った非常に学際的な領域なので、それらに関する知識をある程度網羅的に持ちつつ、解析をお手伝いできる会社は世界的にもまだ少ないのではないかと思います。
4.ハイパースペクトル解析を依頼するメリット
最後に、Milk.株式会社にハイパースペクトル解析を依頼するメリットを
3点上げさせていただきます。
①トータルでのコストが削減できる
②識別の成功確率が高い
③解析後のソリューション提供まで一貫して対応可能
①トータルでのコストが削減できる
前述したようにハイパースペクトルカメラに知見のある方は、あまり多くいらっしゃらないので、自社で研究開発を行おうとすると、別の専門領域を持たれている方が別の領域を学習するということになり、その方の数ヶ月分の工数がかかります。
弊社が入る場合は、そういった方の強みの部分についてはご意見をいただきながら、その他の部分ではこちら側で全て巻き取れるため、非常に工数の削減につながります。
また、ハイパースペクトルカメラのレンタルサービスなどを併用することでハイパースペクトルカメラの購入をせずとも検証をすることが可能です。これらを考えると、少なくとも数十万円~数百万円のコスト削減につながります。
②識別の成功確率が高い
必ず成功するとお伝えすることはできませんが、弊社側でお受けできると判断した際にはほとんどのケースで最終的に「ハイパースペクトルカメラで識別できる」という結果を出すことができています。
これまでの撮影の知見や、学術論文の蓄積などがあるため、ハイパースペクトルカメラが得意な領域と不得意な領域を判別し、事前にアドバイスをすることができるため、成功確率が高くなっています。
③解析後のソリューション提供まで一貫して対応可能
レポート上で「ハイパースペクトルカメラで識別できる」という結果を出して、そこで終わることもできますが、弊社は解析の結果に責任を持ちたいので、「現場で使える」ということを目安にして解析を行なっています。
なので、解析結果が良ければその結果をもとにして光学設計や機器設計をし、現場で使用するカメラシステムまでをご提案することが可能です。
当然ですが、情報伝達のコストも減りますし、ハイパースペクトルカメラの原理を理解した状態でソリューション提供できる会社はまだまだ少ないので、精度もあがります。
以上、3点がMilk.にハイパースペクトル解析サービスを依頼するメリットです。
5.最後に
非常に分かりづらいサービスではあるのですが、ハイパースペクトルカメラに関する知識や経験をもとに、まだ解決策の存在しない領域に対して筋道を立てて課題を解決する過程を共有することができることは、とてもやりがいのある仕事です。
弊社のエンジニアは皆そういった、未知の領域に挑戦することを喜びとする方ばかりなので、ぜひお気軽に難題をぶつけていただけるとありがたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
ハイパースペクトルカメラのレンタルやハイパースペクトル解析のご依頼は、以下のフォームから可能です。
現在お持ちの課題や、ハイパースペクトルカメラに関する疑問をぶつけていただくだけでも問題ございませんので、ぜひお気軽にお問合せください。